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シクロデキストリンとは?

  α-CD β-CD γ-C
  α-CD β-CD γ-CD
グルコース分子数 6 7 8
分子量 973 1135 1297
空洞内径( Å )※1 4.7〜5.3 6.0〜6.5 7.5〜8.3
空洞深さ( Å )※1 7.9±0.1 7.9±0.1 7.9±0.1
水への溶解度※1
(g/100mL、25℃)
13 1.9 26

シクロデキストリン(CD)はブドウ糖(グルコース)がα-1,4結合で環状に連なったオリゴ糖で、環状オリゴ糖とも呼ばれています。連なるグルコースの数によりα-CD、β-CD、γ-CDと呼び方が変わり、その種類によって環の空洞のサイズや水への溶解度などの性質が異なります。

CDによる包接

CDによる包接
分野 具体例
食品
  • ミカン缶詰中のナリンギンの可溶化
  • 紅茶の白濁(ミルクダウン)抑制
  • お茶や各種エキス苦味の抑制
医薬品
  • 薬物のバイオアベイラビリティ改善
  • 各種色素やサプリメント素材の安定化
  • 口腔内崩壊錠などにおける不快味の抑制
化粧品
  • 香料の持続時間の延長(徐放化)
  • 難水溶性の有効成分の可溶化・分散

CD分子は、底のないバケツのような片方の端が狭くなった円筒形をしており、その内部が疎水性、外部が親水性になっています。CDが疎水性の空洞内に分子を取り込むことを包接といいます。このユニークな機能性から、シクロデキストリンは食品や化粧品、医薬品分野などの多くの分野で利用されています。

CDの製造方法

CDはでん粉にCD生成酵素を作用させることで製造されます。CDの製造方法は、製造途中に有機溶媒を使用するか否かで大きく2つに分類されます(※2)。
1つ目は、製造途中に有機溶媒を使用する溶媒法です。この方法では、CDがデカノールやトルエンなどの有機溶媒と包接物沈殿を形成する性質を利用してCDを高収率で製造することが可能ですが、有機溶媒の残留に細心の注意が必要です。
2つ目は、製造途中に有機溶媒を使用しない非溶媒法です。この方法では、溶媒法と異なり有機溶媒の残存に注意する必要はありませんが、分画や結晶化のような処理が必要となります。

CDの製造方法

CDの利用例

①わさびの辛味成分の安定化
わさびの辛味成分は、すりおろされることで壊れた細胞に酵素が働きかけることで生まれるアリルイソチオシアネート(AITC)です。この成分は揮発性であるため、すりおろしたわさびを置いておくと段々と辛味が抜けてしまいます。このような経時的な辛味の低減をCDにより抑制することが可能です。
AITCをCD含有粉末と混合して噴霧乾燥したサンプルについて、残存するAITC含量を経時的に測定しました。その結果、対照区としたデキストリン混合品では数日でAITCが揮発して無くなってしまう一方で、CD含有粉末混合品ではAITC残存率が顕著に改善されることが確認されました。

(方法)
TB-50(CD含有粉末)およびAITCを混合後、噴霧乾燥したサンプルについて25℃/RH60%にて保持し、ガスクロマトグラフィーにてAITC含量を測定。
対照区としてデキストリン混合品も同様に調製し、AITC含量を測定。

わさび
アリルイソチシアネート(AITC)
デキストリン混合品、AITC含量測定

②医薬品成分の苦味抑制
「良薬は口に苦し」ということわざがあるように、医薬品成分の中には苦味を持つものが多く存在します。病気を治すためとはいえ、苦味を伴う薬の服用は患者さんの治療に対する姿勢を消極的にしてしまう可能性があります。このような医薬品成分の苦味をCDにより低減することが可能です。
苦味を呈する医薬品成分であるアムロジピンベシル酸塩およびエリスロマイシンについて、CDを添加した場合の苦味抑制効果を味認識装置で測定しました(※3, ※4)。その結果、アムロジピンベシル酸塩の場合は20 mM量のβ-CD添加で相対苦味強度を1/3以下まで低減できることを確認しました。同様に、エリスロマイシンについては、20 mM量のα-CD添加により相対苦味強度を1/2以下まで低減できました。

(方法)
味認識装置「SA402B」(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー)を用いて測定。
0.5mMのアムロジピンベシル酸塩またはエリスロマイシン溶液に対して各CDを20mM添加した場合の苦味を、CD無添加溶液の測定値を100%とした場合の相対値として算出。

アムロジピンベシル酸塩
エリスロマイシン

③香気成分の保持
食品や化粧品において香りは非常に重要な要素であり、香りの持続性を制御するには香気成分の揮発速度を制御することが必要です。CDを用いることで、香気成分の揮発速度の制御が可能です。 CDが香気成分の保持に与える影響を確認するため、CD水溶液と各種精油を混合して精油に含まれる香気成分の液相への保持率を測定しました。その結果、CDにより多くの精油において香気成分が保持され、特にβ-CDによる保持効果が高いことが確認されました。また、CDの添加量を調整することにより、香りの持続時間を長くする(徐放)のみではなく、嫌な臭いをマスキングすることも可能です。

(方法)
バイアルに1% CD水溶液または純水(CD未添加群)を入れて各種精油を加えた後、密栓して攪拌した。
バイアルの気相をヘッドスペースガスクロマトグラフィーで分析し、CD未添加群と比較した精油中香気成分の液相への保持率を算出した。

  α-CD β-CD γ-CD HP-β-CD
オレンジスウィート
ラベンダー
ペパーミント
ティートリー
パチュリ × ×
ジンジャー
エレミ

CDによる精油中香気成分の保持率
◎:70%以上 ○:50〜70% △:10〜50% ×:10%未満

イメージ図

参考文献
※1 Cyclodextrins in Pharmacy. Kluwer Academic Publishers,1994, p.1-18.
※2 シクロデキストリンの応用技術. シーエムシー出版, 2008, p. 12-36.
※3 特開 2020-19731.
※4 特許 6711875.

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