RESEARCH AND DEVELOPMENT研究開発

水溶性食物繊維 
難消化性グルカンの利用研究

食物繊維とは?

食物繊維は「ヒトの消化酵素で分解されない炭水化物の重合体」と定義されています。 食物繊維は健康への寄与から炭水化物(糖質)、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルの5大栄養素に次いで人に不可欠な第6の栄養素として数えられています。
また、食物繊維は水に溶けない不溶性の食物繊維と水に溶ける水溶性の食物繊維に大別されます。

食物繊維イメージ
食物繊維の構成

難消化性グルカンとは?

難消化性グルカンは、社内研究テーマコンペにて社員のアイデアから生まれた素材で、糖質を原料に活性炭共存下で加熱して得られる水溶性食物繊維素材です。当社は2011年に、この食物繊維を「難消化性グルカン」と命名し、「難消化性グルカン」を主成分として含むフィットファイバー#80を上市しました。
フィットファイバー#80は食物繊維強化用途のみならず、味質や色、物性、ハンドリング性に優れ、さまざまな生理機能を併せ持つ低カロリー素材として幅広く食品へ活用されています。

COOH

▶難消化性グルカンの体内動態

難消化性グルカン

▶推定構造式

推定構造式
難消化性グルカンは α または β 1-2, 1-3, 1-4および
1-6 グルコシド結合をランダムに含む多分岐構造を持つ多糖

S. Nakamura, K. Tanabe, S. Morita, N. Hamaguchi, F. Shimura & T. Oku : NUTR METAB., 13, 13 (2016).
一般社団法人 食物繊維学会「ルミナコイド素材のエネルギー評価の考え方と難消化性グルカン、難消化性グルカン組成物ならびに還元難消化性グルカン組成物のエネルギー評価結果」(2016年9月7日)
Norihisa Hamaguchi, Hirokazu Hirai, Kenta Aizawa, Masayasu Takada:Journal of Applied Glycoscience , 62, 7-13 (2015)

難消化性グルカンの機能

難消化性グルカンは、多分岐構造を持つ水溶性食物繊維です。日本食品化工では食物繊維としての一般的な生理機能に加え、「未病」、「食の高度化・多様化」領域での新たな機能性発掘のために日々研究開発しております。

未病領域
便通改善(整腸機能)
食後の血糖値上昇抑制
免疫グロブリンA分泌促進
血中中性脂肪・血中レムナント様リポタンパクコレステロール上昇抑制

※の機能については研究段階であり、機能性表示食品に対応できません。

食の高度化・多様化領域
フレーバーリリース(香りを閉じ込めにくい)
皮膜形成能と造粒バインダー適性
高甘味度甘味料の味質改善
タンパク質凝固抑制
乳化安定性
乳味感 (コク) 向上

青字で示している機能データは当Webでは掲載しておりませんが、成果については学会や論文、あるいは特許として発表しております。

乳化安定性

食の高度化・多様化

フィットファイバー#80(難消化性グルカン)を用いて乳化安定性を確認しました。その結果、水溶性食物繊維(A・B)と比較し、乳化直後の油滴が小さく、乳化後に分離する油量が少ないことが確認されました。アイスクリーム、ホイップクリーム、マヨネーズ、スプレッド、クリームソース等に代表される乳化を必要とする食品にフィットファイバー® #80を配合することで、滑らかさ、口溶け、冷蔵・冷凍耐性等の向上が期待できます。

乳化直後油滴の状態

食物繊維A 食物繊維B 難消化性グルカン

▶乳化安定性試験
食物繊維:20%, コーン油:40%
水:40%, pH 6.7 に調整

96時間後の状態

食物繊維A 食物繊維B 難消化性グルカン

特開2016-7588(P2016-7588A)

便通改善

未病

排便回数が1週間当たり3~5回の成人男女66名を対象にプラセボを対象とした無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施しました。難消化性グルカン、または対照素材(デキストリン)を固形分として5 g、1日1回水に溶かして2週間摂取した場合、難消化性グルカン摂取群は対照群と比較して排便量と排便日数は増加、排便回数は有意に増加しました。

排便量(個/週)
排便日数(日数/週)
排便回数(回数/週)

排便量は円柱モデルサイズ換算で算出 *:p<0.05(vs.対照区)
引用:薬理と治療, 45(12), 1935-1945 (2017)

食後の血糖値上昇抑制

未病

食後の血糖値が上昇しやすい成人男女62人を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験を実施しました。被験者に負荷食品と同時に難消化性グルカン、または対照素材(デキストリン)を固形分として5 g摂取させました。摂取前、摂取後に血糖値を測定した結果、難消化性グルカン摂取群は対照群と比較して摂取60分後、90分後の血糖値が有意に低くなりました。また、難消化性グルカン摂取時の血糖値濃度時間曲線下面積についても対照群と比較して有意に低い値を示しました。

難消化性グルカン摂取時の血糖値濃度時間曲線
引用:H. Hirai, N. Hamaguchi, H. Bito, M. Suda, T. Sato, T. Kimura, K.Ogawa : Jpn Pharmacol Ther (in Japanese)., 44(10), 1455-1462 (2016).

乳味感(コク)向上

食の高度化・多様化

フィットファイバー#80(難消化性グルカン)を配合したラクトアイスを作製し、味質の評価を行いました。その結果、対照区と比較し、滑らかさに加えて濃厚感やそれに伴う乳味感が増加することが分かりました。乳固形分が少ないラクトアイスに使用することで、乳のコクや濃厚感の向上が可能となります。

▶ラクトアイスへの効果
・対照区150 kcal/100 mLに対して、90 kcal/100 mL(難消化性グルカン使用、植物油脂減量)に抑えた低カロリーのラクトアイスを作製
・食物繊維が100 mL当たり約6 g以上配合

対象区を基準とした6段階評価
特開2016-7588(P2016-7588A)

フレーバーリリース

食の高度化・多様化

フィットファイバー#80(難消化性グルカン)とメントール(香り成分)を配合したサンプルを作製し、さまざまな水分条件下でのメントール放出量を測定しました。その結果、デキストリン区と比較して気相中のメントール量が多く、香り立ち(フレーバーリリース)が良いことが明らかとなりました。フィットファイバー#80(難消化性グルカン)は多分岐構造を持つ食物繊維であるため、香り成分や風味(呈味物質)を閉じ込めにくいことが分かりました。さまざまな食品や飲料、あるいは制汗剤や芳香剤のバインダーに使用しても安定したフレーバーリリースが期待できます。

デキストリンと難消化性グルカン